選書セミナー


 2008年から2009年にかけて、岡山県教育委員会から委託を受けて、津山市と総社市で、それぞれ3日にわたる「選書セミナー」が実施されました。これは「岡山子どもの本の会」で行ったわけではなく、べつに「おかやま選書セミナー実行委員会」という実行委員会を立ち上げての実施でしたが、講師をつとめてくれたのも資料作りにがんばってくれたのも、岡山子どもの本の会の仲間たちでした。

「選書セミナー」(岡山県教育委員会委託事業)
   趣旨:「第2次岡山県子ども読書活動推進計画〜おかやまどんどん読書プラン〜」に基づき、質の良い本を選んで子どもに
       手渡すことの大切さを伝えるとともに、本を選ぶ目を養うための研修を行う。
   対象:県内の子どもの読書に関わるボランティア、図書館関係者、教職員、保護者等



「選書セミナー」(津山)
  会場:グリーンヒルズ津山リージョンセンター ペンタホール

第1回 2008年8月11日 13:30〜16:30
「選書の大切さと、絵本の選び方について」
    資料:推薦絵本リスト

 選書はなぜ必要か  講師:脇 明子氏(大学教授)

   1)これまでの子どもの読書推進活動をふりかえって
   2)いまの子どもたちの状態を根本から改善す方策として、読書推進をとらえなおそう
   3)子どもの読書は、なぜ子どもの状態の根本的な改善に役立つのか
   4)子どもの読書がもっとも大切になるのは思春期
   5)本を選ぶことはなぜ大切か
     参考資料:『メディア依存社会が子どもの発達を脅かしている』(脇 明子)
            『日本小児科医会提言』


 絵本の選書について  
講師:片平朋世氏(保育園主任)

   1)今話題の絵本の検討
     比較に使った本のうちおすすめのものは、『いいないいな』
   2)選書をするにあたって用心が必要な点
     比較に使った本のうちおすすめのものは、『ちいさなねこ』
     『だくちるだくちる−はじめてのうた−』『おふろだいすき』『おなかのすくさんぽ』
     『わたしとあそんで』『ぽとんぽとんはなんのおと』『えぞまつ』
   3)本の紹介(実践例を交えて)
     『めのまどあけろ』『くだもの』『おにぎり』『かいじゅうたちのいるところ』『ちょっとだけ』
     『しゅっぱつしんこう』『しょうぼうじどうしゃじぷた』『いたずらかまきりキリリ』
     『おつきさまこんばんは』『きゅっきゅっきゅ』『くつくつあるけ』『もけら もけら』
     『たまごのあかちゃん』『どろだんご』『ふゆめがっしょうだん』『ティッチ』
     『ガンピーさんのふなあそび』『せんたくかあちゃん』『ラチとらいおん』

            


第2回 2008年8月18日 13:30〜16:30
「昔話の本の選び方について」
    資料:『昔話絵本リスト』
        『昔話集のブックリスト』

 昔話を選ぶということ  講師:吉澤佳子氏(元幼稚園長)

   1)子どもと昔ばなし
   2)本来の昔ばなしとは
   3)なぜ子どもに昔ばなしが必要なのか
   4)昔ばなしのメッセージ
   5)昔ばなしにはそれぞれの国のカラーがある
   6)昔ばなしを選ぶこと
   7)『かさじぞう』の類話の比較


 昔話絵本の選書について  講師:小幡章子氏(学校司書)

   1)動物昔話の絵本……『三びきのやぎのがらがらどん』『おおきなかぶ』『てぶくろ』
        『ガラスめだまときんのつののやぎ』『おだんごぱん』など
     @『ねことおんどり』
     A『三びきのこぶた』の比較
   2)本格昔話の絵本……『ももたろう』『うまかたやまんば』『かさじぞう』
        『王さまと九人のきょうだい』『たなばた』など
     @『つるにょうぼう』の比較
     A『さんまいのおふだ』の比較
     B『ねむりひめ』の比較
     C『きつねにょうぼう』

            


第3回 2008年8月29日 13:30〜16:30
「物語への橋渡しの大切さと、物語の本の選び方について」
    資料:『物語への橋渡しブックリスト』2008.8

 絵本から物語への橋渡しについて  講師:梶谷恵子氏(大学准教授)

   1)絵本から物語への橋渡しはなぜ必要か
   2)感情体験や五感体験はなぜ必要か
   3)今、子どもたちの読書事情とは
   4)どうすればいい本を読めるようになるのか
   5)読み聞かせはなぜ有効か
   6)ゆっくり、じっくり、ていねいに読むことはなぜ重要か
   7)メディア時代だからこそ質のいい読書を


 物語の本の選書について  講師:長谷川美枝氏(公民館職員、社会教育主事)

   1)本が読めるということはどういうことか
   2)子どもたちにどんな本を手渡したいか
   3)地域・学校等での読書推進
    10分間で長編を紹介する方法の実演
     @『ラギーラグ』
     A『小さな山神スズナ姫』
     B『ドリトル先生のサーカス』
     C『オタバリの少年探偵たち』
   4)子どもが「読む力」をつける本を紹介する 
     『チムとゆうかんなせんちょうさん』『7羽のカラス』『時計つくりのジョニー』『太陽の木の枝』
     『白いりゅう黒いりゅう』『魔法使いのチョコレート・ケーキ』『オタバリの少年探偵たち』

            


「選書セミナー」in 総社
  会場:総社市図書館

第1回 2009年1月25日 13:30〜16:30
「選書の大切さと、絵本の選び方について」
  資料:推薦絵本リスト

 選書はなぜ大切か  講師:梶谷恵子氏(大学准教授)

   1)今、なぜ、読書活動の推進が叫ばれているのか
   2)読書活動推進の現状を見直そう
   3)本を選ぶことはなぜ大切か
   4)質のいい読書は、生きる力の育成と子どもの状態の根本的な改善に役立つ
   5)質のいい本を読めるようになるためには、読み聞かせることが有効である
   6)メディア時代だからこそ、質のよい読書を大切にしよう
     参考資料:「メディア依存社会が子どもの発達を脅かしている」(脇 明子)
            『日本小児科医会提言』


 絵本の選書について  講師:室井七美氏(図書館司書)

   1)人気がある、子どもの反応がいい絵本
     比較に使った本のうちおすすめのものは、『もりのなか』『わたしとあそんで』『ピーターのてがみ』
     『ふわふわふとん』『たんじょうび』『いいな いいな』 
   2)選書をするにあたって大切にしたい視点(類似テーマの絵本の比較をとおして)
     ・自然体験、感情体験
     ・五感体験
     比較に使った本のうちおすすめのものは、『ちょっとだけ』『いいことってどんなこと』
     『きみなんかだいきらいさ』『いっぱいやさいさん』
   3)早島町におけるブックスタートと絵本
     『がたんごとん がたんごとん』

            


第2回 2009年2月1日 13:30〜16:30
「昔話の本の選び方について」
  資料:『昔話絵本リスト』『昔話集のブックリスト』

 昔話を選ぶということ  講師:脇 明子氏(大学教授)

   1)昔話絵本は、作るのも選ぶのもむずかしい
   2)昔話絵本やアニメなどにおいては、本来の昔話をそこなう改変も横行しているが、
     それを批判するのはむずかしい
   3)適切な改変かどうかを見分ける目を養うには、まず、いくつかの類話を比較し、
     細部のちがいからどんな効果が生じているかを見るとよい
   4)「かさじぞう」を比べてみよう
   5)昔話は教訓を与えるためのものか
   6)昔話はなぜ子どもにとって大切か
   7)昔話はとても大切だが、それだけでは足りない
   8)昔話から物語への橋渡しを
     「野の白鳥」「旅の仲間」『白いりゅう 黒いりゅう』『千びきのうさぎと牧童』『太陽の木の枝』
     『ちびっこカムのぼうけん』『氷の花たば』


 昔話絵本の選書について  講師:長谷川美枝氏(学校司書)

   1)幼い子どもが理解しやすい昔話にはどんなものがあるか 
     『三びきのこぶた』『三びきのやぎのがらがらどん』『ガラスめだまときんのつののやぎ』
     『てぶくろ』『おおきなかぶ』『おだんごぱん』『3びきのくま』『あたごの浦』『ももたろう』
     『だいくとおにろく』『さんまいのおふだ』『かさじぞう』など
     『ねことおんどり』の紹介
   2)子どもが少し大きくなったら本格的な昔話を手渡したい
     『うまかたやまんば』『たなばた』『マーシャとくま』『ねむりひめ』『つるにょうぼう』など 
     『王さまと九人のきょうだい』の紹介
   3)いろいろな昔話絵本を比較してみる
     @『おおきなかぶ』
     A『おだんごぱん』
     B『ももたろう』
     C『つるにょうぼう』
     D『ねむりひめ』
   4)物語への橋渡しにはどんなものが適しているだろうか
     @『王さまと九人のきょうだい』や『巨人グミヤーと太陽と月』から『白いりゅう 黒いりゅう』へ
     A『太陽の木の枝』

          


第3回 2009年2月8日 13:30〜16:30
「物語への橋渡しの大切さと、物語の本の選び方について」
  資料:『物語への橋渡しブックリスト』

 絵本から物語への橋渡しについて  講師:平尾明子氏(図書館司書)

   1)子どもたちの読書事情
   2)絵本から物語への橋渡しはなぜ必要なのか
     『けんた・うさぎ』『くまのテディ・ロビンソン』
   3)読み聞かせ(朗読)は読書への導きとして有効
     《小学校での読書体験アンケート》に見る朗読の効果
   4)長編物語の魅力
     『宝島』『オタバリの少年探偵たち』『王への手紙』上・下
   5)質の良い物語は子どもたちの生きる力を育てる
   6)小学校高学年にも読み聞かせを
     『ふたりのロッテ』
   7)子どもたちが自分で選べるようになるまでは身近な大人の援助が必要


 物語の本の選書について  講師:藤原 泉氏(高校講師)

  1 選書について
   1)物語とはどういうものか。
   2)物語を読むことの大きな意味
   3)つらい体験にはいりこむための工夫があるもの
   4)大きな満足感を与えてくれるもの
   5)さまざまな視点がえがかれているもの(異性の視点、小動物の視点)
   6)大人という存在の全体像に触れられるもの
   7)自分の考えを表現する力を養えるもの
     取り上げた本のうちおすすめのものは、『ハイジ』『ふたりのロッテ』『ゆうかんな女の子ラモーナ』
     『地下脈系』『プラネット・キッドで待ってて』『影との戦い』『注文の多い料理店』『たのしい川べ』
     『エリコの丘から』『少年と川』『飛ぶ教室』『第九軍団のワシ』『物語が生きる力を育てる』
     『魔法ファンタジーの世界』『脳内汚染』『子鹿物語』『こわれた腕輪』『クレスカ15歳冬の終りに』
     『マイがいた夏』

   2 手渡しの実践例
    10分間で長編を紹介する方法の実演
     @『大きな森の小さな家』
     A『オタバリの少年探偵たち』
     B『雪女 夏の日の夢』
     C『鬼の橋』


関連記事「選書セミナー」in赤磐  最近の例会の内容
       「岡山子どもの本の会」推薦絵本リスト
  お知らせ



HOME 岡山子どもの本の会 活動記録 入会案内 会報誌 本棚の宝物