『くだもの』
(平山和子さく、福音館書店、743円)
 『くだもの』平山和子さく(福音館書店)
 ページをひらくと、まず大きなすいかの絵と「すいか」という文字。次をひらくと、切ってお皿にのせたおいしそうなすいかと、「さあ どうぞ」の言葉。次はもも、ぶどう、なしと、「さあ どうぞ」がくりかえされます。
 絵は白い背景の上に真正面から描かれ、まるで本物のようにあざやかで、ものを見ることにまだ慣れていない赤ちゃんの目にも、とらえやすくなっています。くだものを刺したフォークを持つ手がとちゅうからぼやけ、そのむこうのだれかさんの洋服はぼんやりしているのにご注目。赤ちゃんに見える世界は、まさにそんな感じなんでしょうね。
 比較的小さな月齢の赤ちゃんでも、これを目の前に広げてあげると、じっと見入ります。もう少し大きくなると、指さしをして、何か言いたそうにお母さんの顔を見たと思うと、また絵を見つめたりします。もっと大きな子どもたちは、この果物を食べます。手を伸ばして取って、口に持っていく子や、絵本に顔をつっこんで食べてみせる子もいます。

 

『がたん ごとん がたん ごとん』
(安西安丸さく、福音館書店、700円)
 あざやかな緑の地面の上を、真っ黒な列車が、「がたんごとんがたんごとん」と進みます。するとまず、ほにゅうびんが「のせてくださーい」。また「がたんごとんがたんごとん」と進むと、次のものが「のせてくださーい」。しまいには、列車がいっぱいになったのに、またまた「のせてくださーい」と言うものがいて、さてどうするかは見てのお楽しみ。
 幼い子どもには、「がたんごとん」というリズムが心地よく、「のせてくださーい」と声をかけるのが楽しくて、人気抜群の絵本です。単純なくりかえしは先が予想しやすいので、目の前にないことを思い浮かべる想像力を育ててくれます。お母さんがやお父さんにとっても読みやすく、子どもとの言葉のキャッチボールが楽しめます。
 このあいだ、図書館でこの本を見つけた女の子が、「おかあさーん、“のせてくださーい”の本があったよー」と、うれしそうに話していました。「がたんごとんの本が気に入って、毎晩寝る前に読まないと寝ないんですよ」と教えてくれたお母さんもいます。少し大きい子にこの本を読んであげると、決まって「がたんごとん」と口ずさみはじめ、「もう一回初めから読んで」と言ってくれます。


『まるくておいしいよ』
(こにしえいこ・作、こどものとも012 福音館書店)
 ページを開くと、小さいまるがたくさんあったり、大きいまるがひとつあったりして、次のページを開くと、それがクッキーだったり、海苔巻きだったり、スイカだったりします。食べものの本はとても人気がありますが、この絵本では、食べものばかりが次々に出てくるのではなく、あいだに抽象的なまるだけのページがあって、なんだろうと期待をもたせてから次の食べものが出てくるので、先を想像しながらページをめくる楽しみがあります。
 子どもたちは、すきな食べものを指さして大喜び。おなかをすかしているときなど、よだれをたらす子もいます。絵の海苔巻きをつまんで口元にもっていってあげると、食べる様子をしてくれます。身近なものや実体験を題材にしているので、赤ちゃんにも理解しやすいのでしょう。

『あそぼうよ』
(五味太郎・作、偕成社)
 ことりがきりんのところへ来て、「あそぼうよ」と誘います。でも、きりんは「あそばない」と答えます。ことりはあきらめずに、また「あそぼうよ」と誘い、きりんは「あそばない」と答えます。あざやかな色の楽しい絵で、この「あそぼうよ」「あそばない」が何度もくりかえされますが、愉快なのは最後の場面。ことりが「あしたまたあそぼうよ」と言うと、きりんは「あしたまたあそばない」と答えるのです。つまり、きりんにとっては、「あそばない」が楽しいあそびだったのですね。
 2歳から3歳くらいの、少し大きな子どもたちが大好きな絵本です。単純な内容なのですが、くりかえされる言葉のリズムがおもしろいようで、「あそばない」と言うたびに、キャッキャッと喜ぶ子もいます。
 反抗期の子どもにとっては、「いや」とつっぱねるのが痛快なのかもしれないと、あるお母さんが言われていました。たしかに、いやなときには「いや」と言うのも、子どもにとっては大事なトレーニングなのですね。



           

おすすめ赤ちゃん絵本

今後、おすすめの絵本を少しずつ加えていく予定ですので、ご期待ください。

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