お知らせ

 2007年11月11日(日)にノートルダム清心女子大学児童臨床研究所主催、岡山子どもの本の会共催で、田澤雄作さんの公開講演「−親子の絆・幼い脳・慢性疲労−」が開催されました。この公開講演には大きな反響がありましたが、その時には質問に答えていただく時間がなかったため、質問には後日答えていただき、岡山子どもの本の会のサイトに掲載させていただくことになっていました。 田澤雄作さんから、質問に対する非常にていねいな回答をいただきましたので、ここに掲載します。

 この講演会の報告は、岡山子どもの本の会の会報『ぐんぐんぐん』(第47号の予定)に来春掲載する予定です。会報は岡山子どもの本の会の会員および準会員には郵送されますが、会報のその号だけ必要な方には、郵便振替で送金していただければ(1部だけの場合は送料ともで300円)お送りします。詳しくは、会報誌のページをご覧ください。

2007年公開講演

「−親子の絆・幼い脳・慢性疲労

講師/田澤雄作氏

質問(1〜5)と田澤先生の回答

1)一度慢性疲労になった子は、治った後もまたテレビゲームを始めたら再発しやすいのですか。

家族や本人の理解が不十分な場合、逆戻りする場合があります。慢性疲労は「朝起きない、朝ご飯を食べない」から始まり、笑顔が少なくなる、目の輝きが減少する、背中が丸くなるなどのサインをしっかりと伝えます。前の経験が立ち直りを助けます。家族に問題がある場合は、再発しやすい傾向があります。

2)キッズ携帯についてどう思われますか? 私はキッズ携帯自体は否定しませんが、携帯についているメール機能やネット機能、ミニゲームなどといった機能は必要ないように思います。

売り手は「おまけ」で誘い、売り上げ増加を狙います。子どもの携帯は「安全のため、連絡のため」の機能で十分だと思います。特にフィルタリングなしの携帯は、ゲームだけでなくメールやネット機能を介して、危険な世界の扉を開ける鍵になりかねません。

3)メディア漬けの生活は子どもの成長に何らかの悪影響を与えるものだと考えていましたが、慢性疲労という観点でメディアを考えたのは初めてだったので、とても勉強になりました。ありがとうございました。最近の家庭ではゲーム機が当たり前のようにあるそうですが、自分の子どもにはゲームの楽しみ方ではなく、絵本やわらべうた、体を動かすことなどの楽しさを一緒に感じていきたいと考えています。それでも、小学生ぐらいになり友人の家に遊びに行くこともあると思います。そのような時にゲームと出会うことは「避けられない」と思うのですが、それがきっかけとなり、ゲームを買って欲しいなどと言われた時、どのように対処すれば良いのでしょうか?

「皆が持っている」わけではありません。「お友だちがいなくなる」こともありません。ゲームは「興奮する」楽しさを与える機械であること、「感動する」楽しさと異なること、人間として成長するためには「感動する」体験が大切なことをしっかりと伝えて下さい。どうしてもの場合は、絵本や歌と同じように、気分転換の機械として、土日、5〜10分程度で如何でしょうか。約束を2〜3回破ったらゲーム機を破棄することを勧めます。

4)自殺願望のある不登校の、メディア依存の子からメディアを奪ったら自殺してしまいそうな場合、どうすれば良いのか?一度慢性疲労になった子は、治った後もまたテレビゲームを始めたら再発しやすいのですか。

「自死したい」という言葉は「よく生きたい」というメッセージです。あなたの身体や精神(こころ)を障害している大きな原因は「メディア」であることを伝えてみて下さい。あなたの言葉を理解できる力が残っていれば反応するでしょう。夜にはテレビを見ない、ゲームで遊ばない、携帯をきることから挑戦し、自分の身体やこころの問題が「すこし改善する実体験」を待ってあげることも選択肢のひとつです。

5)TVやゲームを規制しても最近の子は携帯を持っているので、携帯電話でTVやゲーム、インターネットをすると思います。もしも携帯電話まで規制したら、言い争いに発展してしまうと思うのですが、それでも無理矢理、規制した方が良いのですか?

「メディア中毒」の状態にいる子どもや少年の場合、何もかもの規制は「むかつく・きれる・あばれる」を誘発するかもしれません。「ガス抜き」が必要でしょう。テレビ・ビデオは(質的な問題はありますが)見たい番組を選択させて1日1時間(1週間7時間)程度、ゲームは気分転換として土日10分程度が安全です。しかし現代では、携帯が一番危険かもしれません。フィルタリング機能のない携帯は「思春期の少年のあらゆる(病的な)好奇心を満足させる」最悪の機械です。「言い争い」にならないように、まず現実(真実)を話して下さい。脳味噌の機能が低下し、学力低下、不登校、ニート、引きこもり、痴呆状態、家庭内暴力、反社会的事件に繋がることを「勇気」を持って伝えて下さい。


感想(6〜11)と、それを読んでの田澤先生の回答

6)テレビゲームやメディアの影響が子ども達の目にあらわれていることを、はじめて知りました。ゲーム漬けになっている子の目とやめた後の目では全く違っていて、本当にびっくりしました。今日の話の中に自分にもあてはまってしまう部分があるように感じました。今後子どもと関わっていく私達がまず、そのことに気付き、変わっていくよう行動していかなくてはならないと思います。今日から本当に行動を起こしていきたいと思います。

7)改めて親子の絆を小さなころから作っていくことの重要性がわかりました。これからの社会を担う子どもを大切に育てるのは、人のぬくもりコミュニケーションが必要です。メディアの影の部分をたくさんの若い人が理解するよう、それぞれの立場でできることを広げていきたいと思いました。

8)子どものメディア生活の実態を分かりやすくお話していただき、ありがとうございました。TV・ゲームの危険さ、読書について改めて考えさせられました。

9)とても衝撃的な内容でした。私達はあまりにも安易に、便利な生活で本当の豊かさのない生活に流されている人だなと思いました。今日の講義内容を帰宅したら家族に話し、伝えていきたいと思います。

10)脇先生の文化学研究室で今勉強しています。田澤先生のお話は本当にとても勉強になりました。時間が過ぎるのがあっという間でした。本当にありがとうございました。

11)とっても分かりやすい講演でとても良かったです! またお話を聞きたいなと思いました。

 私のお話の感想で多いのは「怖かった」「遅かった」です。でも真実を知ると「恐さ」は姿を消していきます。そして、いつでも「育て直し」は可能です。人間には、劣悪な状況のなかにあっても「人間らしく生きる」恢復可能な力が与えられています。しかし、そのために必要なものは現実世界の「人間モデル」だと考えられています。そのモデルを観て子どもは変化し、「人間の子どもとして再成長する」と思います。大人自身が変わる必要があります。そのために、私たちに何ができるか、一つ一つ積み重ねていくことが必要な時代です。

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