お知らせ

 宮沢賢治の本、ようやくできあがりました。

  これまでにも、例会などで進みぐあいをご紹介した、宮沢賢治の本3冊『狼森と笊森、盗森』『セロ弾きのゴーシュ』『なめとこ山の熊』が、ようやくできあがりました。

  この3冊の本にすばらしい挿絵を描いてくださった小野かおるさんは、『オンロックがやってくる』『銀のうでわ』『巨人グミヤーと太陽と月』など、たくさんの絵本、挿絵で高く評価されておられますが、『おかぐら』の絵本を作ったのがきっかけで、岡山がすっかり気に入られ、最初から「岡山子どもの本の会」を全面的に応援してくださっているのは、みなさまよくご存じのことと思います。小野さんが描いてくださっている楽しい会報タイトルのデザインはすでに3作目、会員証デザインは2作目になります。

  小野さんの絵で宮沢賢治の本を、というアイディアが生まれたのは、4年近く前のこ−ですが、その相談に加わってくださったのが、元岩波書店編集者で、2000年秋に講演に来てくださった、立花美乃里さんです。宮沢賢治の本を出すなら、色つきの絵本ではなく、落ち着いた黒一色の挿絵の本にしよう、それも3冊くらい、という計画がかたまってきたのは、編集者としての長い経験にもとづく立花さんのご意見あってのことでしたし、「岡山子どもの本の会」での勉強や情報交換を通じて、子どもが絵本から物語の本へと進む手助けをすることの大切さを痛感するようになっていたからでもあります。宮沢賢治は、いまの子どもたちが自分で読むにはむずかしいかもしれませんが、大人に読んで聞かせてもらえれば、小学校低学年の子どもたちにも楽しめることうけあいですし、賢治のすてきな言葉を声にするのは、読む大人にとっても大きな喜びになるはずです。

  ではなぜこの3つの物語を選んだのか、ということは、11月29日の講演会でじっくりお話ししたいと思っていますが、とにかく、どれもこれもすばらしいものだらけの賢治の数々の作品を、「はじめて賢治に出会う子どもたちに、挿絵入りの本で楽しんでもらうには」という目で、あらためてじっくり読み返し、選びに選び抜いたのがこの3つであることは、自信を持ってご報告できます。

  取り上げる作品が決まってからは、小野かおる/立花美乃里/脇明子/歌崎秀史の4人のチームで、本の大きさ、ページの組み方などを何度も相談したり、岩手へ取材旅行に出かけたりしながら、はじめはとらえどころがなかった本を、少しずつ形のあるものにしていきました。最初は出版社も決まっていなかったのですが、小澤俊夫さんの昔話研究の雑誌『子どもと昔話』や、昔話絵本などを出している古今社さんが、引き受けてくださることになりました。じつは、古今社で実際の制作にあたっているのは、私たちの会の会員で『ぐんぐんぐん』の制作もしてくださっている、デザイナーの鎌田栄治さんで、そのご縁あってのことでした。

  ですから、この宮沢賢治の3冊は、「岡山子どもの本の会」のなかから芽吹き、子どもの読書の問題を真剣に考えている会員のみなさんの志に支えられて、ようやく完成したものだといえます。現在、書店に氾濫している子どもの本のほとんどは、色あざやかな絵がいっぱいの、アニメやゲームから抜け出したようなものばかり。そうでないと売れないと考えられている世の中に、私たちが送り出そうとしている本は、およそ常識はずれかもしれません。しかし、「岡山子どもの本の会」でいっしょに子どもたちのことを考えてきたみなさまは、きっとこの本のよさを理解し、それを必要としている子どもたちに、いい形で手渡してくださることと信じております。

  11月29日の講演会では、この3つの作品の物語としてのすばらしさや、本作りの経過のことを脇から、挿絵を描くにあたってのさまざまな苦労や、楽しかった取材のことを小野さんから、みなさんにお伝えできればと思っています。そして、こんなものができればと夢見ていた本をほんとに作り上げることができた私たちの喜びを、みなさんにも分かち合っていただけたら、こんなにうれしいことはありません。

                                    2003年11月10日

                                                   脇  明子

講演会 宮沢賢治を親子で読もう (2003.11.29)

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